ヤマハ本社の楽屋にて

配信日 2025・11・13

おはようございます。
坪井佳織です。

今年6月(※2025年)、ローランドのビデオ・スイッチャー「V-80HD」とヤマハさんのデジタル・ミキサー「DM3シリーズ」の機能連携 が発表されました。

このニュースが出た次の日、ワシは浜松市内のMerry You(メリー・ユー)という老舗ライブハウスに遊びに行っちょりました。Merry YouのPA席にはいつもビリー・ジョエル似の謎のオジさま、岡林昌明さんが座ってます。

なぜ「謎」かというと、とにかくいつ行ってもいるし、PA席にいるけど、どうやらヤマハの社員さんだという噂だし、ライブのブッキング連絡先でもあるし。

わたしも何度か出演させていただいたことがあり、若かりし頃から30年くらい行ってるので、いつの間にか岡林さんとも顔馴染みでした。

一度、ふざけてSNSにこんな投稿をしたこともありました。ククク。

で、件のニュースをたまたまMerry Youで知ったワシは、「これ・・・、メルマガ取材させてもらえたりしないかな?」と思いつき、岡林さんに聞いたんです、「この件って、キーパーソンがどなたか知ってますか?」って。

そしたら、

「それはわたしです」

(; ゚ ロ゚)ナン!( ; ロ゚)゚ デス!!( ; ロ)゚ ゚トー!!!

「そ、そうですか・・・、それはそれはどうも」

まだ取材するかどうか分からないのでね、妙なごまかしをして、速攻で編集部に「岡林さんのこと、めっちゃ知ってるから、ワンチャン、取材できるかも!メルマガ出たいって言ってたし!」と報告したのです。

それを聞いたノリノリの編集部が「ローランド側のキーパーソンは誰じゃい」と調べたところ、これまたメルマガ出演歴があり、わたしの旧知のシミー(志水貴光さん、現職は執行役員)だったんですよ!!

リアルガチャピン生き返る >>

(編集部注:志水さん登場回。サムネイルは気にせずお読みください)

わーい、わーい!!!
そこからヤマハさんへの取材申し込みはちゃんとオトナとして筋を通したものの、「ヤマハさんの本社に行きたい!!」「え、いいなー、自分も行きたい(←関係ない編集部員)」と完全に浮き足立った我々、蓑輪社長から、


「取材はOKですが、ローランドとして取材に伺うことを忘れずに(意訳:おまいら、はしゃぐんじゃねーぞ)」

という、幼稚園児みたいな注意を受けましたwww

大丈夫!!
大丈夫です、しゃちょー!!

わたしたち、きちんと社会人として常識を持って・・・、

=ε=(۶`∀´)۶ ヒャッハー!!
ヤマハさんにキマシター!!

・・・ちゃんとはしゃぎました。

でかい!!
でかいよ、ヤマハ本社!!!
浜松の半分くらいを占めています(←嘘)。

そんなわけで実現した、夢のコラボでお話を伺ったのは、ヤマハ株式会社の岡林さんと、ローランドの志水さんです。

(左:ローランド株式会社 志水貴光さん、右:ヤマハ株式会社 岡林昌明さん)

お二人の出会いは、2022年3月に遡ります。 コロナ禍でエンタメ業界にはまだ逆風が吹いていました。ライブハウスでは無観客ライブ配信が取り入れられていましたよね。

もうじき400回を迎えるMerry Youのレギュラーライブ企画、「Band Night」を仕切っていた岡林さんは、悩んでいました。長い関わりの中でライブ企画から音響照明のオペレート、機材メンテなどを担当していたとはいえ、オーナーではないので、配信機材や配線を常設するわけにはいかなかったからです。

そんな頃、とあるライブに出演しに来た若者たちが、サササッと複数のスマホをカメラとして設置し、いとも簡単に配信を始めたんだそうです。

そのとき使われていたのは、ローランドのAeroCaster VRC-01という製品でした。


「配線不要でマルチカメラで配信ができるのか!」と、すごい衝撃だったそうです。岡林さんは、すぐに複数の中古iPhoneを購入し、ご自分が仕切るイベントにAeroCasterを導入しました。

それを目にしたローランド社員が、「使ってたよ」と志水さんに伝え、お二人はSNSで繋がることになりました。


「いろいろ不具合を見つけてたんで、報告や質問を長文で送りました。エンジニア目線で、興味もあったんですよ。当時、志水さんのことはイチ担当者だと思っていたんで、気軽に送ってたんだけど、すごくレスポンスが早くて、どんどんバージョンアップされて、お客さん目線で感動しましたね」


「僕は岡林さんのことは一方的に知ってたので、あの岡林さんが使ってくれてるんだ!と思って、嬉しかったですね。製品を作ってる人はみんなそうだと思うんですけど、届けたい人に届いて、反応をいただけるというのは本当に嬉しいですよ、たとえ文句だとしてもありがたいです」

岡林さんは「カスハラ一歩手前ですよね」と笑ってましたけど、愛ですよね、愛。

半年ほどやり取りが続いた2022年11月、お二人は初めて対面しました。志水さんが高校時代から大ファンのギタリストの山本恭司さんのライブを見に、Merry Youに行ったときのことでした。

音楽がつなげた、ってところがいいですよね〜。

志水さんは当時プロ用ビデオ機器を担当する開発部長で、ローランドのスイッチャーが使われているコンサートやイベントの現場に視察に行くと、ヤマハさんのミキサーが多く使われているのを見かけました。


「実際に現場の方がこの組み合わせで使っているなら、何か技術提携ができて、より便利になったら、ローランドにもヤマハさんにも、もちろんお客様にもメリットがあると思いました。

それで2023年の夏、岡林さんの名刺に書いてあった会社アドレスに、担当の方をご紹介いただけないかと、メールを送ったんです。その時点で、岡林さんとのAeroCasterに関するやりとりは1年を超えていました」

そこは切り分けたんだ(笑)!!


「わたしは1987年の入社以来、ずっとデジタル・ミキサーを開発してきました。実はこのメールを受け取ったとき、たまたまアライアンス(※)を担当する職務に異動したばかりだったんです!

ですので、メールには

“それはわたしです”

とお返事しました」

※アライアンスとは、企業同士の提携のことです。

偶然にも程がある!!
で?
どうなるんですか??


「まずは可能性を探るべく、一度会ってお話しましょう、ということになりました。それから月に一度くらいのペースで話を進めました」

あの〜〜、想像なんですけど・・・、こういうコラボって、盛り上がりはするけど、なかなか実現しないイメージがあるんですよね〜・・・。


「はい、その通りです。

お互いに目の前に優先度の高い、やらなければいけないことをたくさん抱えてるので。実際、今回も途中で何度か停滞しました。

そのたびに、わたしは部署のメンバーに、このコラボの大切さを説明し続けました。岡林さんからも時々“どうなってますか?”とか、引き続きAeroCaster関連のご連絡もいただき、それがいいきっかけになったこともありました。


最終的に、ヤマハさんのDM3シリーズとローランドのスイッチャーの機能を連携させて、現場のオペレーターさんの操作の負荷を減らすという具体案に絞って開発を進めたんです」

(Roland V-80HDとLANケーブル接続したYamaha DM3シリーズ)

編集部より:
機能連携により、V-80HDからDM3シリーズのミキシング設定を記憶させたシーン・メモリーを呼び出したり、設定したチャンネルのオーディオ・ミキサーのフェーダー・レベルとミュート・ボタンを双方向で操作する、といったことが可能になりました。これは「百聞は一見に如かず」だと思いますので、気になる方はヤマハ様と合同で撮影・制作したデモ動画をご覧ください。


「ローランドさんから『ご一緒できませんか』とお声がけいただいたことは、やっぱり嬉しかったですよね。

業界とか製品という話とは別に、普段、バンドで交流がある人たちとついに仕事ができる、という喜びというか。

それに、同じエンターテインメント業界で浜松から世界に出ていく日本企業としてですね、協力し合えるのは楽しいかなと思って」

あ〜、そういえば、岡林さん発案で、25年以上前に「や組(ヤマハ)VSろ組(ローランド)」っていうバンド対決イベントやりましたよね!!わたし、出たわ〜〜〜。岡林さんは元々、そういう、ライバルっていうんじゃなしに、一緒に音楽業界を盛り上げようっていう意識が強かったんじゃないかな。

とはいえ、社内には抵抗もあったんじゃないですか?
両社とも。


「反対はなかったですね、うちは。楽器部署にはあらかじめ、『ローランドさんと提携するからね』というのは打診してありました。


コラボレーションの考え方に関して社内にも新しい風が吹いていたのか、大いにやってくださいということで、胸をなで下ろしましたね」


「ヤマハさんにご快諾いただけたということを、まぁ、ほんの少し盛って(笑)、蓑輪さんに報告しました。ローランド側も特に抵抗はなかったし、蓑輪さんは、もともとコラボや共創にとてもポジティブな人ということもあって、スムーズに話が進みました。

世間に公表する前に、まずは2024年11月のInter BEE(編集部注:日本最大の放送機器展示会)で、オフィシャルなプレスリリースを出さずにお互いのブースに並べて参考出展していたんです。そこでとても好意的に受け入れられたことで、確証を得ました。

製品が売れるということも嬉しいですが、何より、既にお持ちのお客様から喜んでいただけたのは自信になりましたね」

(編集部注:Inter BEE 2024 のヤマハ様ブースにて)

結果、今年6月に正式発表したときは、大きな話題になったというわけですね。

それにしても、数々の偶然とお二人の情熱が、夢のコラボを実現させたんですね〜。 いやぁ、すごいお話でした・・・。

ちなみに、この奇跡のメルマガコラボにはしゃいだのは我々だけではありませんでした。取材には無関係のヤマハ社員のみなさまが次から次へと「ローランドのメルマガ取材が来てるって?」と見にいらっしゃいました(笑)。

実は、同じ浜松市にある楽器メーカーということで、プロのライブやアマチュア音楽イベントなどでは、ローランド社員とヤマハ社員が仲良く交流している場面がそこかしこで見られるんですよ〜。

そんなわけで、取材を覗きにいらしたみなさまから、口々に、「MIDI規格の歴史回、すごかったですね〜。御社にとっても歴史的文献になったのではないですか?」と、褒めていただけました!

MIDIの名は住之江フォーマット! >>

そういえば、他メーカー同士が音楽の発展のために協力し合うという点では、今回のコラボと共通してるかもしれません。

温かく迎えてくださったヤマハ社のみなさま、ありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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本号はバックナンバーです。本文中の製品情報や取材をお受けくださった方の肩書、および弊社社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。
著書『好きなことだけすれば子どもは伸びる』(みらいパブリッシング)

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