幻のグルーブボックス

配信日 2021・4・1

おはようございます。
坪井佳織です。

先々週、徳島の三芳菊酒造株式会社、五代目の馬宮亮一郎さんちへZoomを使ったバーチャル訪問の様子をお届けしました。

倒産寸前だった酒造を救ったのは、味の探求と、味をTB-303のつまみで表現した萌え萌えラベルでした。

→前回「ワイルド・サイドを歩きまくってる人んち訪問」
https://www.roland.com/jp/promos/gakuya/backnumber/bn_20210318/

今日はそのつづきです。

酒蔵の一部は鉄筋コンクリートでできていて、夜中でも音が外に漏れないので、ライブやイベントを催しているそうです。

そのひとつが「往年のロックの名盤を爆音で聴く会」

こちら↓が酒蔵に設置されたDJブースと巨大なスピーカーです。
実際に音を鳴らしてもらったところ、程よいリバーブでめちゃくちゃ良い音でした。

こちら↓が馬宮さんの趣味部屋です。

機材はマニアックなものばかり!

もともとギタリストだった馬宮さんですが、90年代からテクノやダンスミュージックが好きになり、デジタル系のビンテージ機材を集めていたそうです(ここに写っていないものもいっぱいありました)。

上からいきなりマニアックなのですが、DJ-70。ローランド・ヨーロッパSpAで開発/生産していたターンテーブル付きの鍵盤付きサンプリング・ワークステーションです(発売がMC-303よりも前だったので、どっちが史上初のグルーブ・ギアか社内論争があったとかなかったとか…)。

真ん中はCASIO FZ-1GX。1987年発売の16ビット・サンプリング・シンセFZ-1の廉価版です。足元にあるアンプはJC-120。リズムマシンのTR-707です。

左下のオレンジ色で異彩を放っているのはD2です。詳しくはあとで書きます。

こちらは上から伝説的なベースライン・シンセサイザーのTB-303とリズムマシンのTR-909。

2段目はローランド初の鍵盤付きサンプラーS-50(1986年)。3段目のAKAI X7000(1986年)は佐久間正英さんも愛用された QD(Quick Disk)(※1) サンプラー。馬宮さんにQuick Diskの現物も見せていただきました。

※1 編集部注:QD(Quick Disk)は1984年に発表された磁気ディスクの一種。フロッピーディスクと違いランダムアクセスできないが、安価だったため当時のサンプラーや任天堂のファミコン「ディスクシステム」などに採用されました。

足元は、MC-09(フレーズラボと呼ばれる、TB-303を再現したDSPシンセとオーディオ・ルーパーを搭載したナナメ上いく製品)、EF-303(16ステップで強烈なDSPエフェクトをコントロールできる変態的なグルーブ・エフェクター。実はDSPシンセにもなる実力波迷機)、SH-32(32音のバーチャル・アナログシンセ)、TR-606(リズムマシン)、MC-202(シーケンサー)などがあります。

中でも、ワイルド・サイド過ぎるのが、オレンジ色のD2(2001年)です。

大ヒット商品のグルーブボックス、MC-303、MC-505、MC-307の次に発売された異色の製品です。

この異色の製品D2について、当時の開発メンバーに取材をしてみました。

当時の急激な円高ユーロ安に対応すべく、大胆なコストダウンと新たな付加価値を創出するという全社プロジェクトの一環で開発した機種だそうです。

「思い切ってコストダウンだ〜!」と頑張りすぎて、中身はMC-505相当の高性能だったにもかかわらず、グルーブマシンなのにツマミも、スライダーも、16ステップ・スイッチも、というか液晶ディスプレイすらありません。

でも、パッドで感覚的に操作するようにしたことで、触るとすごく楽しかったそうです。特にパッドでMIDIとリバースサンプルを駆使して(無茶して)パターンの逆再生を再現したり、ソロフレーズを演奏できたりなど、画期的なリアルタイムのパフォーマンス性が生まれました。

当時のグルーブ製品のカタログです、トップにD2が来るくらい力が入った製品でした)

それで、開発部では「これは来るぞ!」と盛り上がったのですが・・・、

・・・来ませんでした。

「全然売れませんでした!残念!」(by当時の開発メンバー)

「D2に関しては時代が付いて来られなかったと、今でも思ってます」(by 製品開発リーダー)

「内蔵のサウンド・パターンは、今でもたまーに評価してくれている人がいるのが嬉しいです」(by当時のサウンド担当者)
ちなみに、この製品開発はツマミもディスプレイも無くあまりにシンプルだったため、ソフトウェア担当者は残業が減り(それまでは連日の休日出勤でした(※2))「D2のおかげで結婚できたんだよねー」とのことです。どうでもいい情報ですみません(by当時の開発メンバー)

※2 編集部注:20年以上前の話でして、現在はそのようなことはございません(汗)

これはグルーブボックスの系譜ですが、こうして並べてみると、どれだけ異色な製品か、ひと目で分かりますよね〜。

馬宮さんは、このワイルド・サイド製品のD2を、なんと3台もお持ちだそうです(驚)。

「リズムマシンだけのパフォーマンスと違って展開が作りやすくて、パッドのパフォーマンスがすごく良いので、なかなか替えが効かない機材なんですよ。2台同時にパフォーマンスして1台は予備で持ってます!」

開発部が「これは来るぞ!」と思って来なかった製品ですが、徳島に3台も来てましたw

いつか、三芳菊さんの酒蔵でオフ会できたら楽しそうだなぁ〜。

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本号はバックナンバーです。本文中の製品情報や取材をお受けくださった方の肩書、および弊社社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。
著書『好きなことだけすれば子どもは伸びる』(みらいパブリッシング)

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