Roland | The TR-909 Story

ハウス・ミュージックとテクノ・ミュージックの中心的機材として使用されてきたRoland リズム・コンポーザー TR-909は、その音楽シーンの発展に少なからず貢献してきました。909DAY (9月9日)は、エレクトロニック・ミュージックを愛するすべての人に感謝の意を表し、そのミュージック、カルチャー、そしてミュージシャン一人一人の発展を祝す一日です。TR-909の発売から35年以上経過した今日においても、野外フェス、アンダーグラウンドのクラブハウス、またはスタジオの片隅で909は使われ続けています。この特設ページでは、TR-909 RHYTHM COMPOSERと、909サウンドと共に発展した音楽やカルチャーについて振り返ります。

一人のDJ、一台のTR-909、そして数千の観客

フェスが終わるまで踊り続けられる特別なリズムマシン

PART 1

THE ORIGIN
1983年:日本

80年代前半、その時代には、私たちが知っているエレクトロニック・ミュージックという音楽は存在しませんでした。当時は、アップテンポなソウルのようないわゆるダンス・ミュージックが中心で、リズムマシンを使用したエレクトロニック・ミュージックは、影も形もありませんでした。まさにその頃、当時大阪に本社のあったローランドでは、1つのエンジニアチームがTR-808の後継機種の開発に着手していました。もちろんその時、"その製品"が、のちにエレクトロニック・ミュージック・シーンやカルチャーに影響をもたらす製品になるとは誰も予測していませんでした。

Roland TR-808 - The Sequel

TR-808の後継機

ローランドがTR-808の生産を終了した1982年、業界は急速な変化を遂げていました。TR-808の開発は1978年から行われており、その後継機をどのような仕様にするのか、切迫した議論が重ねられていました。リズムマシンの良いところや課題について、マーケットの意見からも学んで行きました。常にチャレンジ精神に溢れていたローランドのエンジニアたちは、TR-808やほかのリズムマシンとの違いをどう出すか、常に想いを巡らせていたのです。

アナログ & デジタル?

TR-909の開発開始当初、ローランドはデジタル・サンプリングしたドラム・サウンドを採用したマシンではなく、ドラム・サウンドをアナログで実現する"ドラム・シンセサイザー"の開発アイディアを追求していました。アナログであれば、例えばバス・ドラムのサウンドやタムのサウンドをディチューンしてクリエイティブなサウンドを出すなど、自由度の高いサウンド・メイキングが可能だと考えていたからです。一方で、ハイハットやシンバルについては、サンプリングしたサウンドを採用することを決めました。その方が、より良い製品を生み出すことができると、当時のエンジニアたちは判断したのです。

当時の開発者が振り返る開発秘話はこちらからお読みいただけます。

TR-909 - The Sound

TR-909サウンド

パンチのあるアナログ・サウンドと、シャープなハイハット/シンバル・サウンドのコンビネーションが、その後シーンを象徴するサウンドを生み出しました。アナログとデジタルが融合せず、それぞれ別々のものだったとすれば、おそらくその時代の音楽ジャンルにはフィットしなかったでしょう(TR-909のバス・ドラムとタムのサウンドはアコースティック・ドラムの代用として少しパンチが効きすぎているetc..)。そして、うまくアナログとデジタルを融合させたTR-909と、常に新しい音楽を模索していた当時の音楽プロデューサーたちによって、徐々にハウス。ミュージック、テクノ・ミュージックが形作られていくことになります。

MIDI接続

TR-909は、ローランドのリズムマシンとして初めてMIDIを搭載しました。MIDIの出現により、リズムマシンやサンプラー、エフェクトの同期が可能となり、音楽制作用のプライベート・スタジオが普及しました。このようなユーザーの工夫により、レコード会社での制作が中心だった時代から、誰でも音楽制作を行うことができる時代にパワーシフトが起こっていったのです。そして、それから数年も経たないうちに、TR-909を中心としたセットアップを使うハウス・ミュージックやテクノ・ミュージックが徐々に頭角を現していきます。

TR-909 - MIDI connection
TR-909 Sequencer

シーケンサー

TR-909の開発で進化したポイントの1つは"シーケンサー"です。TR-909のシーケンサーは、10種類の内蔵ドラムサウンドを使った"パターン"の制作を可能にしました。また、"フラム"や"シャッフル"といった機能も搭載され、パターン再生時により自然でマシン臭さのない演奏を可能にしました。また、パターンをスイングさせることができたり、サンプラーなどの他のMIDI搭載機器と組み合わせて、トラック全体のタイミングを合わせることができたため、初期のエレクトロニック・ミュージックに多用されました。

The Roland TR-909

1983年に約1,300ドルで発売されたTR-909は、約1年間で10,000台製造されただけで、その製造が終了となります。MIDI接続、強力なシーケンサー、外部ストレージ、高品位なサウンドなど、TR-808の後継機として数多くの機能改善があったものの、その製造期間はTR-808よりも短かったのです。製造終了後、常に新しい演奏スタイルに挑戦する若手ミュージシャンたちが、その後中古ショップでTR-909を手にしていきます。その流れから、プロのスタジオ現場を対象にするのではなく、ドラム・サウンドとシーケンサーなどのミニマルなセットアップで楽曲制作を行うユーザーに向けた製品として打ち出しが必要だったことがのちに分かったのです。

The Roland TR-909 Back panel
Part 2 - Players + Places
PART 2

PLAYERS + PLACES
1985〜1995: ハウス & テクノ

1980年代中盤、デトロイトやシカゴのプロデューサーによってTR-909のサウンドが徐々に使われはじめたことをきっかけに、その後、エレクトロニック・ミュージックを推進していく次世代のプロデューサーたちの道しるべとなっていきました。さらに、エレクトロニック・ミュージックの盛り上がりは、その発祥の地からはるか遠くまで広がります。そして、ロンドン、マンチェスター、ベルリンが、強力なユースカルチャーの震源地となっていったのです。ここからは、TR-909がハウス・ミュージックとテクノ・ミュージックの発展に少なからず寄与したとされるいくつかのレジェンド・トラックをご紹介します。

Inner City - Good Life

GOOD LIFE
INNER CITY

デトロイト・テクノのパイオニアKevin Saunderson率いるInner Cityは、Big Fun (1988年リリース)をはじめとする多くのトラックでTR-909を使用しました。また、80年代後半、彼らが制作したトラックによって、それまでアンダーグラウンドだったテクノ・ミュージックが日の目を見るようになり、大衆に受け入れられる音楽であることが証明されたのです。この頃から、テクノやハウスが徐々にポピュラー・カルチャーに進出しはじめていきます。

ENERGY FLASH
JOEY BELTRAM

21歳にしてテクノに二度革新をもたらしたと言われる、ニューヨークを中心に活動するJoey Beltram。彼の制作キャリアは傑作Energy Flashから始まります。Energy Flashのドラムサウンドは間違いなくTR-909そのものであり、そのトラック中でTR-909が最も効果的な方法で使われています。メタリックなハイハット、リバーブのかったクラップ、過激なキック・サウンドは、90年代のクラブ・シーンの中でその後塗り替えられることのない飛び抜けた成果をあげました。

Joey Beltram - Energy Flash
Rhythim IS Rhythim - Strings Of Life

STRINGS OF LIFE
RHYTHIM IS RHYTHIM

"Strings of Life"は、テクノ史上最も愛され、シーンに最も影響を与えたとされるトラックです。勢いよく無駄のないピアノ、ストリングス、ドラム・サウンド。誰しもが名曲としてリストに挙げる一曲です。このDerrick Mayのマスター・ピースでも909サウンドが用いられ、多幸感を演出しています。そして、"Strings of Life"は、エレクロトニック・ミュージックであっても、エモーショナルに仕上げられることが認められたのです。

CHIME
ORBITAL

1980年代終盤に"Chime"をリリースし、ロンドンのレイブで頭角を表した"Orbital。そのトラックは、Orbitalを一躍メジャーに押し上げました。デトロイト・テクノをリスペクトしながら、自身のアイディアとパワーをフルに注いだChimeは、その後数年、UKのスタンダード・チューンとなりました。また、30年経つ今でも、その楽曲は色褪せることなく、クラブシーンで観客を盛り上げています。

Orbital - Chime
The Wizard - Jeff Mills

JEFF MILLS
THE WIZARD

Jeff Millsは誰しもが認めるTR-909の第一人者です。Underground Resistanceで活躍したミシガン生まれのDJは、その後、テクノ・セットを包み隠すことなくライブパフォーマンスを行い、リアルタイムにTR-909を自由自在に操ることでもその名を知られることとなります。Millsは、常にダンスフロアに目を向けながら、一方で音楽やテクノロジーの将来を見据えていました。常に最高のハーモニーを生み出すMillsとTR-909のつながりは、テクノ史に残る関係性です。

ALTITUDE
SYSTEM 7/DERRICK MAY

もし音楽がどこか別の場所に連れていってくれるとしたら、Derrick Mayの作品に敬意を払い、未来への旅の準備をしましょう。System-7のSteve Hillageとのコラボレーションにより、遥か彼方の惑星への想いを刺激するこのトラックが生まれました。そして、この作品のコアな部分にもTR-909のサウンドが使われています。

System 7/Derrick May - Altitude

ROLAND ENGINEERING
Atsushi Hoshiai and the TR-909

その登場から約40年、TR-909の開発者 星合 厚(ほしあい あつし)は今もローランドに在籍し、ローランドの新たな可能性を探究し続けています。ローランドの公式メールマガジン『ローランドの楽屋にて』の取材で明かした当時の様子、ローランドの入社秘話や趣味の話は、ローランドの楽屋にてのバックナンバー・サイトでご覧いただけます。ここでしか読むことのできない楽屋話をぜひお楽しみください。

インタビューを読む

PART 3

THE CULTURE
90年代後半〜現在: ワールドワイド

このようにエレクトロニック・ミュージックは全世界中に広がりました。デトロイト、シカゴ、ベルリンで始まったこのシーンの影響力は今なお止まることなく広がり続け、Las Vegas、Ibiza、Miami、Amsterdamどこへいっても、常にTR-909のサウンドがエレクトロニック・ミュージックを取り巻いています。また、エレクトロニック・ミュージックの形が多種多様になった今日において一つ明確に言えることがありますーライトが落ち、手が上がった瞬間に、TR-909の音が鳴り響く・・・ 40年近く、そしてこの先もずっと。

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    The TR-909 Today
    PART 4

    THE TR-909 TODAY

    現在 から 未来へ

    今日でもTR-909のオリジナル・サウンドを得る方法はいくつかあります。1つは、80年代に製造されたオリジナルのTR-909を見つけ、手に入れることです。そのオリジナルのサウンドやパフォーマンス性を超えることができる、もう一つの選択肢をご紹介します。

    オリジナルのTR-909

    オリジナルのTR-909は10,000台しか製造されなかったため、その貴重性が年々高まっています。所有欲を満たすことにも重要性を見出している方は、オリジナルのTR-909を探し出し、手に入れてみるのもいいかもしれません。

    Original TR-909
    Aira TR-8S

    AIRA TR-8/TR-8S

    AIRA TR-8Sは、「現代のテクノロジーでTR-909が作られたらどうなるのか」というコンセプトのもとで開発されました。TR-808のサウンドに加え、サンプルの読み込みや、パフォーマンスに使える多彩なエフェクトが搭載されています。

    詳しくはこちら

    TR-09 ROLAND BOUTIQUE

    TR-09(販売完了)は、歴代の名機を再現したRoland Boutiqueシリーズの中で最も定評のある1台です。オリジナルのUIを忠実に再現しながらリズムのプログラミングやパターンの構築がよりシンプルになった電池駆動のTR-909は、いつでもどこでも909サウンドを楽しむことができます。

    Roland TR-09 Boutique
    Roland Cloud TR-909

    ROLAND CLOUD 909

    アナログとデジタルがクラブ・ハウスで融合。Roland Cloudのプラグイン・ソフトウェアとして提供されるTR-909は、オリジナルのTR-909のサンプルROMを採用しています。同時に複数のインストを走らせたり、プラグインのTR-909からプロジェクトへパターンをMIDIやオーディオとしてドラッグ&ドロップが可能です。また、16ステップ・シーケーンサーは、各インストごとの調整が可能となり、プログラミング性能が向上しています。

    詳しくはこちら

    Try the TR-808 in your browser

    TR-909をブラウザで体験しよう

    ローランドは創立50周年を記念して、サウンド・デザイナーのスズキ ユウリ氏とのコラボレーションを実現。長年人々に愛され、現在もミュージックシーンに影響を与え続けているモデルをオンライン上で実現するRoland 50 Studioを公開しました。リズム・マシンTR-909とともに、兄弟機であるTR-808やサンプラーSP-404MKII、シンセサイザーSH-101、そして唯一無二のTB-303サウンドを堪能いただけます。作成したトラックを保存して世界中にシェアすることもできます!

    ※ROLAND 50 STUDIOのTR-909は日本時間9月9日の午後8:00より利用可能です。

    ROLAND 50 STUDIO

    LEGENDARY SOUND.
    ICONIC GEAR.

    このたび、Roland Lifestyleでは909dayを記念して、新たな909デザインのアパレル・グッズを展開します。909ファンの皆さま、ぜひこの機会にゲットしてみてください!

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