TAIKO-1の印(しるし)に
思いを込めて
「環」という漢字一字をモチーフにデザインされたTAIKO-1の印(しるし)。さまざまな旗がひとつの太鼓で繋がる様を表現したものです。
電子和太鼓 TAIKO-1の開発プロジェクトに携わる中で、たくさんのご縁をいただき、さまざまな場所で多くの人々にお会いしました。プロの太鼓打ちの方々や、その活動を応援し、支援する方々。魂を込めて太鼓をつくる方々。真摯に太鼓の伝統に向き合う一方で、新しいことにチャレンジする多くの姿に、私たちは心動かされました。
また、地域のグループや部活動で太鼓演奏に励む方々。太鼓レッスンに通う方々や教える方々。一生懸命に稽古をする小学生や幼稚園の子どもたち。イベント会場でTAIKO-1の試作機の展示をした際、うれしさのあまりバチを離そうとしない、子供たちの笑顔が忘れられません。
プロ/アマ、老若男女、国籍…目指すところや楽しみ方は違えども、我々の行く先々にいつもあったのは、互いを尊重し、一緒に楽しむ「人の環(わ)」でした。我々は、太鼓の響きには人と人をつなぐ不思議な力があると信じています。その思いをこの印(しるし)に吹き込み、日本から世界にむけて発信していきます。
試作機で振り返る
TAIKO-1の変遷
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初号機
(2017年)
「2017年と2018年の試作機では、電子和太鼓に必要な技術要素を探るとともに、外観デザインの面では、伝統的な桶胴太鼓の型(姿)を守ることに取り組んでいました。開発に行き詰まったときは、桶胴太鼓のロープを解いてバラバラにし、それをまた組み直して打ち鳴らす。太鼓の伝統に思いを巡らせ、太鼓の響きを体に染み込ませました」(開発担当・談)
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弐号機
(2018年)
「2018年の試作機は多くの方々に触れていただき、さまざまな気づきをいただきました。また会話を通して、伝統から新たなことにチャレンジされている多くの方がいることを思い知りました。そして、ある太鼓打ちの方はこうおっしゃいました。『新しい何かに挑戦し続け、そのあとに残ったものが伝統になる』と。ある会場でお会いした初老の男性の言葉も強く印象に残ります。その方は、地域の仲間と太鼓グループを作り、現在は若い方々がその跡を継いでいるそうです。『新しいことにチャレンジする若い子たちのエネルギーはすごい、想像を超えることを考え出すんだ』と」(開発担当・談)
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参号機
(2019年)
「2019年の試作機では、手本としてきた桶胴太鼓の型を、ローランド独自の新しいスタイルに発展させました。これは、太鼓文化のさらなる進展に向けた我々のチャレンジです。完全な新設計となった打面と、それを繋ぐ8本のパイプロッドは、腿への自然なフィッティングと最適な重量バランスに大きく寄与しています。打つ位置/強さを読み取るセンシング技術と、それを受けて再現する太鼓の響きとを最適なバランスに落とし込むのは容易なことではありませんでした」(開発担当・談)
奏者とともに作りあげたTAIKO-1
長く険しかった電子和太鼓TAIKO-1開発の道のり。試作を繰り返し、奏者さんの声を聞く。改良を加え、また試してもらう。太鼓奏者のみなさんの貴重な意見がなければ、完成は難しかったかもしれません。奏者のみなさんに試作機を抱えてもらい、「動きやすさはどうか?」「担ぎやすさは?」のヒアリングを繰り返す。その結果、実際の太鼓の重量に近づけることに成功しました。加えて重要視したのが、表現力です。響きへのこだわり、細やかな演奏ニュアンスの表現。寄せられるひとつひとつの声に耳を傾けながら、みなさんとともに作りあげた電子和太鼓TAIKO-1。世界中の方に演奏していただき、さらに多くの意見が聞けることを楽しみにしています。