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2年以上かかる開発を1年でやった件
配信日 2020・8・6
おはようございます。 坪井佳織です。 自粛生活の中で一気に発展したことといえば、テイクアウトです!普段はとても手が届かないようなレストランのお料理がテイクアウトできるようになって、新しい価値観が生まれましたよね〜。 本日は、ローランドの新しい価値観の誕生をご紹介します! 今年の1月(※2020年当時)に超優秀な専用チップBMCを使ったZEN-Coreという音源システムが発表されました。
https://www.roland.com/jp/promos/zen-core/
ZEN-Coreは、いわば、三ツ星フレンチレストランと中華料理店と和食割烹で、同じ味の同じ料理を味わえるようなもの。ZEN-Coreを搭載したシンセでは、同じ音を鳴らすことができ、しかもシェアできるという画期的なシステムでした。
ところで、ローランドの社長(※編集部注:当時は三木社長)といえば、ヒョコッと開発部署に来てはムチャ振りすることで有名ですが、今回も「ZEN-Core音源を完璧にソフトウェア音源にしてみよか!」と、とんでもない発案をしていたそうです。ムチャ振りといっても、元々エンジニアだったために、エンジニアたちの大好物=「腕を試される絶妙に実現可能なライン」を攻めてくるから、まんまと士気が鼓舞されちゃう、というw
してみよか!って、できるものなのかどうか、基礎技術部の田中郁生部長(※2020年当時)に聞いてみました。
「ものすごく大変です。少なく見積もっても2年以上かかるところ、泣きそうになりながら1年でやりました」 あー、でも、泣けばできるのか・・・ふむ。 「いや、泣いても普通はできないので、めっちゃ工夫が必要でした」 というわけで、「ローランドの技術部と開発部のエンジニアが総力を挙げて開発したソフトウェア音源」がZENOLOGYです。
https://www.roland.com/jp/products/rc_zenology/
ZENOLOGYは「ゼノロジー」と読みます(「ゼンノロジー」ではありません!)。イントネーションは、超貴重なツアーTシャツを乾燥機でくっしゃくしゃにされたときの「おかーちゃん・・・」と同じです。あっ、エコロジーとも同じです。←最初からそう言わんか。 ハードウェアのシンセから出てくる音と、ソフトウェア音源で鳴っている音を同じにするのは想像以上に大変なんです。 たとえて言うならば、三ツ星レストランのごっつい厨房で作っているお料理を、ワンルームマンションのミニキッチンで再現するようなもの。使っている調理器具から調味料まで、全く違うプロセスを経て、最終的に味と満足感は同じにしなくてはいけないのです。 何のとっかかりもないのに手がけるには、泣くだけじゃ済まなさそうです。
「実は、製品化の予定があったわけではないのですが、BMC(チップ)をPC上でシミュレートする環境をプログラミングしていたエンジニアがいたんです」 うぉー、これはめっちゃローランドらしいエピソードです!開発効率を上げるためのPCツールとして粛々と作っていたらしいです。 作っていた方は、以前メルマガで紹介したFantom-Gシリーズで必要以上に凝った裏技ゲームを仕込んだ古畑さん。なるほどー、そこが繋がるのかー。 また、BMCチップでアナログシンセの音を生成する部分をPC用に書き換えたのが星合さん(まだ社内にいるTR-909の開発者のひとり→詳しくはこちら)でした。 お二人とも、若手が通りやすい道を開拓してくれたわけですね。
(編集部注:このプロジェクトはものすごく多くの人がからんでいて、本当は全員紹介したいくらいなのですが、紙面の都合でお二人を紹介する形となりました、すみません)
この下地があったために、三ツ星レストランとワンルームマンション、同時進行で同じ料理を開発するシステムキッチンを構築できました。 三ツ星レストランで作られた料理をミニキッチン用に移植するだけでは、味が改善されるたびにわちゃわちゃと対応しなくてはいけません。そのうち、何をどう変更したのか分からなくなりそうです。 だから、今後もハード音源とソフト音源を同時にスッキリと開発するために、まず環境を整えたのですね。 これって、モノづくりのお仕事をされていらっしゃる方はご想像できるかもしれませんが、言うほど簡単ではないんですよね。一見、遠回りにも感じられるから。そこに時間と労力を割く開発経路をたどるのは、将来と全体像を見据えた強靭な視点が必要だったのではないでしょうか。 下地があったとはいえ、90種もあるエフェクターの移植、Mac版の対応など、数千単位の作業リストをコツコツと潰していく日々。いくつもの困難を乗り越え、最大の山場は軽量化との闘いだったそうです。 もともと、FANTOMやJUPITER-Xなどのハードウェア・シンセは、BMCという超賢い専用チップ=「ごっつい厨房」があるからこそ実現しているわけで、PCのメモリ内=「ワンルームのミニキッチン」でいかにクオリティを落とさずに同じ音を出すか、ちゃんと考えて作らないと、少し弾いただけでCPUパワーがいっぱいになってしまうので、日々、軽量化のために励んだそうです。 個々のアイデアがうまくいかず、煮詰まったときには全員が集まって作戦会議を開いたそうです。 「でも、ひとりひとりで考えうることは実行して、それでもうまくいってないから煮詰まってるわけでしょ?その状態で集まって、打開策は生まれてくるもんなんですか?」 「それがねー、生まれるんですね〜」 へぇ!! そこがチームワークの成せる技かもしれないですね。 何をどう測ったかはお見せできないのですが、こんな風に攻略したものを毎日グラフにして「おぉ〜、できてるぞ!ゴールは近いぞ!」って勢いづけながら開発を進めていったそうです。こういうのも大事なんですね。
こうして「おかーちゃん」のイントネーション(←もういい)、ZENOLOGY(ゼノロジー)ができました。 「泣きながら」とか言ってましたけど、なんか「うわーん!・・・|ω・`)チラッ」って感じで、嬉しそうに見えたのはわたしだけでしょうか。エンジニアにとって、腕が試されるチャレンジって、たいへんだけど結局楽しいんでしょうね。 実は、楽器メーカーのローランドが最新鋭の音源で本格的なソフトウェア音源にがっつり力を入れて開発するというのは、三ツ星レストランにドライブスルーを作っちゃうくらい、ものすごく新しい価値観の導入なのです。 テーブル席とドライブスルーで同じ味を出し続けるシステムを作っちゃったので、今後も常に同時進行で同じ音が出せるようになるそうです。 しーかーもー!!! これまた時代に合わせて、ZENOLOGYを使うには、サブスク、つまり、定額使い放題らしいです。 無料プランもありますが、月額約300円($2.99)(※2020年当時)で飛躍的に使える音源が増えます。そんなん、登録するでしょ!! ↓こちらのムービーにZENOLOGYでどんなことができるか、分かりやすくまとまっています。ぜひ、字幕をONにしてご覧ください。
https://youtu.be/NJqPppkAHSE
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当記事はメルマガ「ローランドの楽屋にて」のバックナンバーです。本文中の製品情報や社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。
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ライター・プロフィール
楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)
電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。
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