本気で演歌をコピーした!

配信日 2020・6・4

おはようございます。
坪井佳織です。

早くライブやコンサートに行きたいですねぇ・・・。 ミュージシャンのみなさま、ライブハウスさま、舞台演出業者さま、楽器店さま、この困難を乗り越えて、必ずまた、音楽業界、盛り上がりましょう!!

今日は、90年代、ローランド社員がいかに愉快だったかご紹介しようと思います。

かつてローランドには「ミュージック・フェスティバル」という、社員が作る音楽イベントがありました。

あるとき、「本気で演歌を演奏しよう」という企画が持ち上がり、みるみるうちに話が広がって、総勢30人くらいが関わるビッグ・プロジェクトに成長しました。プロジェクト名は、当時流行っていた「だんご三兄弟」から取って「おやぢ四兄弟 歌のビッグショウ」でした。

↑全員、社員ですw

ギタリストはナイロン弦の音が欲しいために新しいギターを買い、「座って演奏する」という楽団スタイル。本気の持っていき方がおかしいです。

指揮者は当時の社長、檀さんの名前をお借りし、「檀池田」氏。

知らない若者のために説明すると、昔、音楽番組は全部生バンドで、歌謡曲といえば「ダン池田」さんが指揮していたのです。ちなみに、この役は「池田」という苗字だからという理由だけで選ばれた社員でした。

歌謡ショーといえば、イントロに被せてしゃべる司会者が必要ってことで、妙に声の良い新入社員をスカウトしました。ご覧いただくと分かるとおり、新入社員とは思えない堂々とした仕切っぷりです。彼もまさか、入社そうそう、こんなくだらないプロジェクトに参加させられるとは思わなかったことでしょう。

さて、1曲目は石原裕次郎さんの「夜霧よ今夜もありがとう」。

ここで事件が起きます。 盛り上げ役だった山本氏(現在「楽屋にて」編集部員)が、「こいつもメンバーに入れて〜」と同期入社のハセチを連れて来たのですが、特に楽器が弾けるわけでもなく、歌がうまいわけでもなく、見た目もガチガチのオタクだったのです。

オトナなので誰も口には出しませんでしたが、「違うんだよ、山本〜!俺ら、仲良しメンバーで盛り上がりたいんじゃなくて、マジで本物感を追求したいんだよ〜、そういうんじゃないんだよ〜」という空気が漂ってしまいました・・・。

このハセチが、本番で大化けするのですが、それはのちほど。

裕次郎は総勢4名出てきまして、当時のデザイン担当部門で出力したボラード(船を繋ぎ止めるアレ)に乗せる片足が密集しておりますw

そして、花束を渡しに来るファンとして、わたしの両親にヤラセを仕込みました。

こういう細かい演出を考えているときがいちばん盛り上がるんですよね〜。

2曲目は僭越ながらわたくしが、「顔が似ている」ということで都はるみさんの「あんこ椿は恋の花」を歌わせていただきました。

目の向き、マイクの角度など、メンバーからの厳しい指導に耐えました(涙)。

3曲目は石川さゆりさんの「津軽海峡冬景色」。

わたしたちの着物は、わざわざ着付けの方に当日お越しいただきました。

そして、この曲でこだわったのは、「ありがとうございます」と声にならないお礼を言いながら頭を下げること!

かもめの鳴き声はSP-808というグルーブ・サンプラーで鳴らしております。

大トリは、鳥羽一郎さんの「兄弟船」。

ふんどし姿で盛り上げているのは、ほんとにバカだった若かりし頃の編集部の山本氏です。

ふんどしの締め方も研究したらしいです。まだYouTubeもない時代ですからね〜、どうやって調べたのでしょうか。

鳥羽さんが乗って出てくる大漁丸は、当時社内に一台しかなかったデザイン部門のレーザー・カラー・プリンターで出力し、段ボールで作りました。

網はテニス部にお借りしました。

泣きのトランペットサウンドが聴きどころです。

ちなみに、映像部隊もいまして、リアルタイムで大画面に歌詞やテロップを表示してました。

オープニングとエンディングは、妹尾さん(現在、総務人事部)が元ネタの「だんご三兄弟」を歌謡ショー風にアレンジして、サウンドキャンバスSC-88Proを駆使して打ち込みました。よく聴くと「だんご三兄弟」のメロディーが聞こえてきます(笑)。そして、無駄に派手なハープでしつこく盛り上がってます。

エンディングでは、紙吹雪が舞うのですが、これも社員がやっております。

当時、松本勤務(つまり、松本市から浜松市まで、紙吹雪を撒くためだけにやって来てくれました)だった平田氏(現在、市場開発部)にお願いしたのですが、彼は、社内でも有名な超絶テクニックを持ったギタリストなのです!!

なのですが、その腕は1ミリも活かされることはなく、ステージ上からひたすら紙を撒く、というw

実はここにもローランド技術者のこだわりがありまして、普通の四角だと綺麗に舞わないということが分かり、試作を重ね、ついに「もっとも美しくヒラヒラと舞い散る形=三角形」にたどりついたらしいです。情熱の持って行きどころを完全に見失っていますw

細部にわたり、クオリティを追求した我々は、練習の最後の方には、何度やってもぴったり17分で終わる、という域まで到達してしまいました。

「俺ら、すげー!」という想いが頂点に達して本番の日を迎えたのですが、なんと、時間になっても大トリの鳥羽さんが来ません。さすが大御所とか言ってる場合じゃなく、スマホもLINEもない時代なので、どこでどうしてるのか分からず、めっちゃザワザワしました。

そしたら!!

歌の大御所風のヘアスタイルに散髪して現れましたwww
しかもスラックス、開襟シャツの上にブルゾンという完璧ないでたち。

残る気がかりは彼ですよ、山本氏が「こいつも入れてくださいよぅ〜」と連れて来たハセチ。

彼だけがクオリティを下げてるんだよなぁ・・・と思っていた我々の前に、なんと、ホンモノの裕次郎が現れたのです!!

そう、ガチガチのオタクは、髪を七三にしてグラサンをかけると、裕次郎にソックリだったのです!!!(※ちなみに当時20代です)こんな爆弾が仕込まれていたとは!!

か細い声で歌いながら出てくるときは失笑だった会場が、ざわざわ・・・、「ほ、ホンモノ?!」という声に変わり、最後は大歓声に包まれる様子は、まるでスーザン・ボイル。

というわけで、注ぎ込める技術力をとことんまで注ぎ込んだ、渾身の舞台をご覧くださいw

https://youtu.be/9iOKr8neDrU

当記事はメルマガ「ローランドの楽屋にて」のバックナンバーです。
本文中の製品情報や社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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