パンツを洗う上司

配信日 2020・04・02

おはようございます。
坪井佳織です。

今日は電子和太鼓TAIKO-1の音の秘密についてお届けします。

TAIKO-1の開発にご協力いただいた、世界で活躍する太鼓芸能集団、鼓童(こどう)さんの活動拠点は新潟県の佐渡島にあります。その名も「鼓童村」。約4万坪の敷地に、稽古場や宿泊施設、工房、スタジオなどがあります。

https://www.kodo.or.jp/

開発チームは船に乗って、何度も佐渡島へ渡ったそうです。

(編集部注:フェリーの写真が無かったため、たらい舟の画像を掲載しています。実際はものすごく沢山の機材を大型のワンボックス・カーで運んでます)

TAIKO-1の音源部はV-Drumsと同じく最新鋭のモデリング方式で、和太鼓のあらゆる音の変化を高度に再現します。そのモデリングをするために、実物の太鼓の収録をしていきました。

防音スタジオで録音すれば楽なのですが、太鼓が大きすぎて運び出すこともスタジオに入れることもできないため、鼓童村のスタジオ(稽古場)で録音させていただくことになりました。

(太鼓の巨大さがわかりますでしょうか?)

といっても、録音用の施設ではないので、あれこれ問題が起きたそうです。

問題のひとつは、部屋の中のあらゆるものが共鳴してしまうこと。
そのため、部屋中に毛布をかけて、音を消しました。

よし、これでOK!

・・・と思ったら、次の大問題が発生しました。

それは・・・、カラスと鈴虫!

なんと、夜になると鈴虫の大合唱が始まり、とても収録などできません。日が落ちるまでが勝負です。その昼間も、油断をするとカラスがやってきては「カーカー」と鳴くのですから大変です。

当然、「今、録音中だから!シーッ!!」という、まるで昭和時代にテレビの音をラジカセに録音していた(みなさん、知らないですよねw)ときにお母さんに言うかのようにカラスに言っても仕方ないですからね。

それでどうしたかというと、遠征サウンド・チームの中でもっとも偉い、開発部長(当時)の西さんが、上着をバッサバッサと振り回し、カラスを追っ払ったらしいです(爆笑)。

しかも、バッサバッサとカラスを追い払っている西さんの姿を見かけた鼓童のメンバーさんが、

「すっ、すみません!
外で見知らぬおじさんが暴れてるんですけどッ!!」

ってスタジオに駆け込んできたそうですwww

もう、何から何まで面白いです。

西さん曰く、「現場に行ったら、上の人間がいちばん暇ですから、そのぐらいしか役割がないんですよ〜」とのことで、えーと、これ書いていいのか、開発秘話でもなんでもないっていうか、むしろものすごい秘話なんですけど、民宿で開発メンバーのパンツを洗っていたらしいですwww

TAIKO-1はモデリング音源以外にも、「なんでそこまでこだわるの?」というくらい変態的なこだわり機能があります。それは、鼓童のみなさんが毎年公演される、佐渡の「宿根木(しゅくねぎ)公会堂」をそのまま再現したリバーブです。ローランドの最新の電子ピアノLXシリーズで開発した「ピュア・アコースティック・モデリング」という空間の響きにとことんこだわった新技術を応用してます。

ホールのあらゆる場所にマイクを立て、音がどのように変化して響くのか解析して「ホール自体」をモデリングしてるそうです。ヘッドホンで聴くと、この宿根木公会堂や、鼓童さんが選んだ「日本で一番和太鼓の響きが良いホール」(ごめんなさい、ホール名は書けません)の響きが忠実に再現されるそうです。すごすぎます。

(佐渡の宿根木公会堂。この音場が忠実に再現されるそうです。部屋でのヘッドホンの練習が楽しくなりそう)

TAIKO-1の新製品発表会で鼓童さんの演奏を聴いたとき、リハでも本番でも、何度やっても太鼓を打つタイミングの正確さに驚愕しました。

それが科学的に証明された、すごいエピソードを教えてくれました。

太鼓の音を収録するにあたり、さまざまな強さの音が欲しかったので、「とりあえず10段階でだんだん強くなるように、1音ずつ打っていただけますか?」ってリクエストを出したそうなのです。そうしたら、見事に線でグラフを書いたようにきれ〜いな10段階になっていたそうで、パソコンの画面を見ていたサウンド担当の髙井瞬さんは、思わず「みなさん!ちょっとこれ見てください!!」と叫んだそうです。

また、TAIKO-1一台で10人分の太鼓を演奏できるようにするために、10人くらいで同時に太鼓を打つ音をモデリング用に収録しました。タイミングがわずかにズレた「ザン!」っていう音が欲しいのに、鼓童のメンバーのタイミングがバッチリ合いすぎて「ダン!」になってしまったりとか。

鼓童さんのステージを見た後なら、あまりにも想像できるエピソードだったので、目をまん丸にして聴き入ってしまいました。

実は、このTAIKO-1、先週も少し書きましたが、ローランド製品ではたいへん珍しく、開発途中段階でお披露目されていました。今回紹介した鼓童さん以外にも、たくさんの方々とのご縁をいただき、みなさんと共に作りあげて来ました。

わたしも開発していることは知っていたのですが、自分が和太鼓を演奏するわけではないので、電子にすることで何がいいのか、実はピンと来ていませんでした。

プロの和太鼓奏者の方にレビューをお願いしたところ、

・音、表現力がすばらしい!正直、ここまで電子でできるとは思ってなかった。
・ちゃんと撥を鋭角30度で当てないとよい音が出ない!
・音量調節ができるので、和太鼓の使用が原則禁止になっているホテルのディナー・ショーでもこれなら使える。
・運搬がたいへんな大太鼓の音がすばらしいので、あらゆる演奏現場で使われると思う。
・ヘッドホンで和太鼓練習ができるなんて革命的!!

などなど、大絶賛の声をいただいているそうです。

新製品発表会で初めて演奏を聴いたとき、「あ、そっか!電子だから、和太鼓の音だけでなく、音楽の幅を自由に広げていいんだ!」と、目からウロコでした。TR-808みたいなサウンドや、「いよっ!」というボイス、サンプリングしたマリンバの音など、多彩な音が聴ける「巡」、ぜひお聴きください。

「巡」(MEGURU)の動画

みなさんにも、開発メンバーの日本文化に対する敬意と和太鼓への愛、そして製品に対する熱い想いが伝わったら嬉しいです。

(佐渡島の民宿にて、サウンド・チームの皆さん)



電子和太鼓 TAIKO-1公式サイト>>

本号はバックナンバーです。本文中の製品情報や社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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