めっちゃ賢い新音源、あるよ

配信日 2020・01・23

今日はみなさまに、ローランドの新音源「ZEN-Core Synthesis System」について、日本一分かりやすく解説してみようと思います!フンゴー!

お話を伺ったのは、基礎技術部長の田中郁生氏。わたしにとっては「郁ちゃん」です。

約30年前、まだ入社1年目だった郁ちゃんと仕事を一緒にして、ファミレスにお昼ご飯を食べに行ったときのこと。あろうことか、「コーヒーはいつお持ちしましょうか?」の問いに「あ、先で」と答えたのです!!

えっ?
なんで?!

「だっておかわり自由だから先にも後にも飲んだ方がお得でしょ」

えぇ~~~~?!
そんな人、初めて見たよ!!

そして、次の日にご一緒したのが当時の新入社員で現在メルマガ編集部の山本氏で、まったく同じ振る舞いをしていたので、若かったわたしは「ローランド社員はみんなコーヒーを先にも後にも飲む。なぜならお得だから」と認識したのでした。

それはさておき、ここに架空のマスターがいます。

「ねぇマスター、ちょっと曇った朝にパリの街角でヒールに疲れた足を休ませながらバター香る極上のクロワッサンと一緒に飲んだ、あのコーヒーを淹れてちょうだい」

「・・・あるよ」

「ねぇマスター、3階席まで満席のホールでの全身全霊のフォルテシモ、クリスマス・コンサートのピアノ・コンチェルト最後の和音に含まれてるドの音を鳴らしてちょうだい」

「・・・あるよ」

こんな複雑な注文に瞬時で応えるローランドの音源技術を「モデリング」といいます。

ローランドでは、6~7年前から研究を重ね、あらゆる振る舞いを再現できる超優秀なマスターを育て上げました。彼の名は「BMC(Behavior Modeling Core)」。意味は「おいら、振る舞いをモデリングしちまうぜ」です。

でもねー、「ねーねー、食前も食後もコーヒー出して~。お得だから!ぐへへー」というアホな、いや、薄っぺらい、いや、簡単な注文ばかり出していてはせっかくのBMCも活かされないわけですよ。

それをどう活かすか考えて、技術と開発を結ぶのが郁ちゃん改め、偉くなった基礎技術部長(※当時)、田中郁生氏のお仕事でございます。

これまで、2015年のLX-17、2017年のTD-50など、ピアノ音源、ドラム音源の最上級モデルでBMCの能力を発揮してきました。

このたび、ついについに、種類もスタイルもいろいろすぎて、どうすればいいの?となっちゃう「シンセサイザー」の領域で使えるように開発したスーパー音源システムが「ZEN-Core(ゼン・コア)」です。

ここでは、めっちゃ有能なマスター、BMCが作り上げたコーヒーマシンのことを「ZEN-Core」と呼ぶことにしましょう。普通、コーヒーマシンは入っている豆やボタンの種類によって、どんなコーヒーが飲めるか限定されますが、「ZEN-Core」は、今までの方式とは全然違ってめちゃくちゃ賢いので、とんでもない種類のコーヒーが飲めます。

こちらをご覧ください。

ローランドのシンセサイザーの系譜図です。
これを、腰砕けへなちょこ画伯のワシが、コーヒーショップに表してみました。

アナログ・ゾーンには、言わずと知れた、レジェンド喫茶店が立ち並んでおります。こだわりのサイフォン式自家焙煎コーヒーで、店ごとに味わいが違うのが魅力。今でも世界中にコアなファンがいるお店です。ですが、老舗すぎて、その店まで行かないと味わうことができませんでした。しかもそれぞれがめちゃくちゃ遠い。それでも好きな人は「わざわざ出向くこと」に価値を感じてくださっていたんですけれどね。

ZEN-Coreコーヒーマシンは、この老舗喫茶店の味わいを「あるよ」って出してくれます。

ローランド技術の最先端ショップがデジタル・ゾーンです。いわばスタバといったところでしょうか。新しいメニューを開発したり、より居心地の良い店舗になったり、前のショップを継承しつつ、発展していっています。とはいえ、途中経過の味が好きなファンも根強くいらっしゃいました。

ZEN-Coreコーヒーマシンは、過去の技術エッセンスをさらに高度に発展させ、再現のみならず、まったく新しいテイストを作り出す能力があります。

そして、最後。
個性派ゾーンですよ。
これは、それぞれエッジの効いた、開発者の尖った思い入れのあるショップ群です。

ZEN-Coreコーヒーマシンは、この尖ったフレイバー・コーヒーも、味わうことができます。

つまり、老舗喫茶店のオリジナル焙煎コーヒーも、最先端のシアトル・コーヒーも、個性派フレイバー・コーヒーも、1台で全部作れてしまうのがZEN-Coreなわけです。

9月に発表されたワークステーションFANTOM6/7/8、シンセサイザーのJUPITER-X/Xm、グルーブボックスのMC-101/707そして今回のNAMMショー(世界最大級の楽器見本市/2020年1月当時)で発表したステージピアノのRD-88、すべてにZEN-Coreが入っています。

でね、今までできそうでできなかったことがZEN-Coreによってできるようになりました。今回のNAMMショーで発表されたアップデーターによって、ZEN-Core搭載機種で作った音は、他の製品で鳴らすことができるのです。

FANTOMショップのオーナー、J氏が作ったコーヒーのレシピをJUPITER-Xmショップのバイト、MくんがZEN-Coreコーヒーマシンに入れれば、同じ味のコーヒーを違うショップで注文できる、というわけです。

と、ここまでやってもまだBMCマスターには余力があります。

「なんか時間も材料も余っちゃってるな~、せや、スーパーナチュラル・アコースティック珈琲も、Vピアノ珈琲も、あとバーチャル・トーン・ホイール・オルガン珈琲も作れるようにしたろ!」

理屈的には、これまでローランドで開発された音源技術を搭載することも可能らしいです。

ただ、めっちゃくちゃにメニューを増やしても、老舗喫茶店で「インスタントは誰も飲まないわ~」となるかもしれないですよね。増やしすぎて選べなくなってもいけないので、どの機種に何を搭載するかはこれから慎重に考えるそうです。とはいえ、「やろうと思えばできる」っていうのはすごいポテンシャルです。

どうでしょうか?

・ものすごく有能なマスター → BMC
・めちゃくちゃポテンシャルの高いコーヒーマシン → ZEN-Core
・コーヒーショップ → どんどん出てくるZEN-Core対応機種
・フィルターと挿れ方で無限のテイストがあるコーヒー → 同じくフィルターが重要な音色

「音が良いよ」って言葉で表現するのは難しいのですが、わたしは「濃い」「深い」っていう印象を持ちました。なんかもう、すご過ぎて、「めっちゃ」とか「ものすごく」としか表現できないことをお許しください。

体験したマニアの皆さま、より良い表現で語ってくださると嬉しいです!

>ZEN-Coreについて詳しくはこちら

当記事はメルマガ「ローランドの楽屋にて」のバックナンバーです。
本文中の製品情報や社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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