SH-101開発秘話(前編)

配信日 2019・10・17

おはようございます。
坪井佳織です。

メルマガの「特集してほしいローランド製品ある?」というアンケートに寄せられた、読者のみなさまからの声をご紹介します。

SH-101を聞きたいです。モノ・ポリの違いもわからず、YMOでシンセの音の虜になってシンセを触ってみたいという思いから当時通信教育を始め、セットになっていたSH-101は、初ローランド、初アナログ、初シンセでした。電源入れて和音が出なかったのはショッキングでした。音作りの基本はこれで学びました。

開発秘話を聞きたい商品は、SH-101です。私が初めて購入したシンセで、それ以前のシンセは高価過ぎてとても手が届くものでは無かったのですが、SH-101の登場で一気にシンセが身近なものとなりました。機会がありましたら紹介して下さい。

おまたせ、おまたせ、おまたせ〜〜〜〜〜!!
たいへん長らくおまたせいたしました!

JUPITER-8のハードウェアを設計した山端利郎さんが待ち時間に開発していたもの、それがSH-101でした。ですから、設計はあっという間に仕上がったそうです。

SH-101のコンセプトはこのようなものでした。

・小さい(最初から仕上がった製品のサイズの計画だった)
・電池駆動
・デジタルシーケンサー、アルペジエーター
・コンピューター制御
・プラスチックの筐体


デジタル・シーケンサーをビルトインした初めての機種で、最大で100ステップ入力することができました。これは、搭載された128バイトのRAMのうち、単純に100バイトを使ってしまうことを意味していました。すると残りは28です。残りのすべてのプログラムを28バイトで動作させなくてはいけないわけです。
それで、山端さんは「ほとんどメモリを使わないアルゴリズム」を作りました。

他に苦労した点として、この頃、静電気による誤作動や製品から出る不要な電波を抑える方法について、ローランドにはまだノウハウがなく、規格を守りながらちゃんと動作させるのがたいへんだったそうです。

本体は、コスト削減のひとつの方法として、“塗装なし”とすることに決めました。だから、SH-101のあのグレーの色は、樹脂の地色です。型に流し込んだときにどうしてもできてしまう継ぎ目やキズなどを塗装で隠すのですが、それができないため、シボ加工というシワ模様を付ける表面処理をして、さらにキズが目立たない色として決定しました。

(編集部注:その後発売された赤/青色のSH-101は塗装されています。しかも、色が綺麗に乗るように樹脂の色も赤や青色になってます)

筐体で苦労した部分は、電池駆動するためのフタ部分の爪だそうです。ゆるいと演奏中にポロっと取れてしまうし、硬いと開かないし。その精度はコンマ数ミリという世界で、程よい加減が大変だったとか。

製品裏の金属部分は、横から見たときに薄く見えるように、一度曲げてあります。

パネル部分は、山端さんがどのような機能があるか図に描いてデザイナーさんに提出したところ、ほとんどそのまんま製品になったそうです。

手描きといえば、当時は取扱説明書もエンジニアが書いていて、図は手描き。製品は写真を使っていました。今もネットで見ることができます

SH-101開発秘話はまだまだ続きます〜!

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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