激レアシンセが見られる博物館

配信日 2019・06・13

おはようございます。
坪井佳織です。

先週(編集部注:2019年当時)は、浜松駅から徒歩10分、東洋最大の楽器博物館をぐるりと一周、ご紹介しました。

今日は楽器の日!>>

こちらがフランス革命の戦火を逃れて日本にやってきた、通称「ブランシェ」というチェンバロです。

実はねー、ローランドから電子チェンバロが販売されてるんですけど、みなさま、ご存知ですか?

ちょ〜ど今から1年前、このメルマガでも特集しました、C-30です。
(編集部注:現在は販売完了となっております)

開発されたのは2007年。

当時、開発を担当された現・三木社長(編集部注:2019年当時)は、当時の社長と一緒に超一流のチェンバロの音を求めて、音大などに足を運んだのですが、断られ、ダメ元で紹介を受けた楽器博物館に相談に行きました。

ド素人のわたしが考えても「そんなん無理に決まってる!」って思いますが、嶋和彦館長(当時)から、まさかの「ええよ〜」。

どうしてあっさりOKだったのか、このいきさつについて、嶋さんにお話を伺いました。

「博物館の在り方としてね、“何もしない”という選択もありなんですね。

もしかしたら、それが一番ラクかもしれない。

でも、楽器というのは歴史的な工芸品であると同時に、音楽を奏でるという重要な役割があります。

楽器博物館としては、手入れしたり研究したりして、“演奏する”という生きた展示も考えていきたいのです。

そういう意味で、企業ともどんどんコラボして、活かしていくのはとても重要な役割だと考えました」


なるほど〜。
でも、それにしたって、それをOKにするには、許可を得たり、書類を通したり、なんだかややこしそう。

「いや〜、“企業がブランシェの音を一音一音録音して解析してくれて、その研究結果をそっくりいただく”って通したんですよ。

うちは何もせんで機材も技術もお借りできるわけやから、そんないいことはないってね(笑)」

そういうありがたい経緯があり、C-30は世界に誇る国宝級の名器、ブランシェ・チェンバロを参考にさせていただき、仕上がったというわけです。
C-30は電子楽器コーナーではなく、チェンバロコーナーに展示してあり、弾けるようになってます。

嶋さんには、もうひとつ、「美術館には近代美術といって現代作家の作品も展示してある。電子楽器も展示したい」という思いがあったそうです。


「今はまだ創世記の電子楽器も集められるけど、あと10年もしたらもう手に入らなくなるよ」という研究者の助言から、今しかない!と2003年に特別展「楽器と20世紀~夢と憧れ・創造と亡失~」が開催されました。

今のシンセマニアの方も「欲しい!!」って言いそうなパンフレットを見せてもらったんですが、30ページもある大作で、貴重な製品がいっぱい載ってました。

たとえば、シンセサイザーのページを開いてみると、こんな感じ。

当時の販売価格も書いてありました。

・Roland JUPITER-8 (980,000円)
・Roland SH-1000 (165,000円)
・Roland SYSTEM-700 (2,650,000円)
・YAMAHAさんのDX-7 (248,000円)

どれも高い!!
初任給が4万円くらいのときですからね〜。

これらの楽器は、特別展のために企業やコレクターが貸し出したそうです。
その一部は、現在、楽器博物館に寄贈され、常設展示されてます。

こちらがローランドのSYSTEM-700。手前は、ローランドの前身、エース電子工業の電子オルガンです。超激レア品です。

SYSTEM-700はモノフォニックなので、和音を奏でるにも多重録音が必要でした。何度も録音を重ねると、どうしてもノイズが入ってしまいます。
ローランドのシーケンサーMC-4が開発された当時、冨田勲さんが「これでノイズがずいぶん減る」と喜ばれたそうです。

こちらは京王技術研究所(現KORGさん)の試作1号機。
1969年、日本初のシンセサイザーとも言える電子オルガンです。

それから、京王技術研究所(現KORGさん)のリズムボックス「ドンカマチック」。「ドンカマ」という言葉の由来となった製品です。

こちらは1959年発売の、日本楽器製造株式会社(現ヤマハさん)のエレクトーン1号機。
メインアンプは真空管、他の部分は281個のトランジスタが使用されてました。

電子楽器コーナーのさらに奥に体験コーナーがあり、Vドラムが置いてあります。

いかがでしたか?
2週に渡ってご紹介した楽器博物館。

現在は退かれていますが、嶋元館長がコンセプトをアグレッシブに実現し続けただけあって、ただ置いてあるのではなく、楽器が何かを訴えてくるような展示です。
ぜひぜひ、足をお運びください♪

本号はバックナンバーです。本文中の浜松市楽器博物館様の展示情報や取材をお受けくださった方の肩書、および弊社社員の役職等は配信当時のもので、現在とは異なる場合があります。

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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