危険な大失敗談

配信日 2019・01・10

新年あけましておめでとうございます。坪井佳織です。
今日は、2019年新春初おたよりのご紹介から!

ローランドの楽屋にて をいつも楽しく拝見しております。 形式ばった商品紹介だけのメルマガと違う楽しみがあります。 開発秘話を聞きたいローランド製品、JD-800です。 よろしくご検討くださいませ。         

はいはい〜、行ってまいりましたよ〜、JD-800デザイナーの福岡昭彦さんへのインタビュー。福岡さんは、V-Drums、JP-8000、Fantomシリーズなどローランドを代表する製品をデザインして来られたスゴい方なのです。

福岡さんは、「キング・クリムゾンの話しかしてはいけない」という、クリムゾン縛り飲み会のメンバーです。わたしは、クリムゾンといえば、「っんぬぁ~~~」って感じの顔のアルバム・ジャケットしか知らないので、当然、参加資格はございません。

・・・ったく、どーしてローランド社員はプログレおっさんがこうも多いのでしょうか。

(見た目はダンディーな福岡さん、とても面白い人でした)

福岡さんの幼少期を辿ってみましょう。

子どもの頃はプラモデル「しか」作ってなかったそうです。毎日毎日、タミヤ製ドイツの戦闘機や戦車のプラモデルを作り、出来上がったらその絵を描きます。そのスケッチで培ったデッサン力の基礎をこじらせると、デザイナーになるんだそうな。

勉強もせず、プラモしか作らない毎日を心配したご両親に、担任の先生が、

「お母さん、お父さん、どうせいつか飽きますから、それまで好きにやらせて大丈夫です」

とおっしゃったそうです。

・・・が、まさかご両親もそれが中1まで続くとは思っていなかったことでしょう!

そんなにも好きだったプラモ作りをなぜやめたかというと、「もうほとんど作ったからw」とのことです。なんかちょっと、目が(-_-)←こんな風になりました。

その後、中学生でロックに出会い、クラスに3~4人、語り合う仲間がいたところに、転校生ノリアキくんがやって来て、「キング・クリムゾン」という爆弾を投下。「なんじゃこらー!!!」と福岡さんは腰を抜かしました。

ドイツ戦闘機のプラモ→クリムゾン→ローランド。

何やら、自然な繋がりを感じるのはわたしだけでしょうか・・・。


「ミュージシャンになりてぇ!」という強烈な夢を抱えたまま、いや、ひょっとしたら今も狙ってるかもしれませんが、ローランド入社後はデザイナーとして数々の製品を手がけていきました。

「福岡さんのデザイン画、何か残ってたら送ってもらえませんか?」とお願いしたところ、「手描きのが出てきたんで、添付しまーす」とすぐにお返事が来たのですが、あやうく「あれ?福岡さん・・・、添付されてませんよ・・・。CGしかないですよ」って返信するところでした。

コレ↓、手描きに見えます?!?!?!

デザイン画を元に作る、立体の模型のことを「モックアップ」といいます。今は自動切削器や3Dプリンターを使いますが、当時は工作していました。材料は、バルサ材、発泡スチロール、ケント紙などです。

あるとき、89年~90年ごろ発売された「R-8」というリズム・マシーンのモックアップを役員たちに見せなくてはならないのに、制作が間に合わなかったそうなんです。

それで、なんと、福岡さんは、大阪の所属部署から浜松まで移動する新幹線のトイレに1時間くらいこもって仕上げをしたらしいんですね。しまいには、車掌さんが来て、「大丈夫ですかぁ?!」と声をかけられたのですが、「だ、大丈夫でーす!」と中から答えたまま、出てこられるはずもありません。何せ、トイレで塗装していたので!!水溶性だったらしいですが、よく倒れなかったですよね・・・。

その甲斐あって(?)R-8は無事製品化され、ユーミンの「満月のフォーチュン」など、90年代の多くのJポップで使われることになる大ヒット商品になりました。

危険なエピソードはもうひとつあります。

ある冬の日、一人だけで休日出勤をしてモックアップを制作していた福岡さんは、塗装のエアブラシ用スプレー缶をお湯で温めました。温度が低いと圧力が下がるためです。

そうしたら、温め過ぎちゃって、スプレー缶の底が破裂!

福岡さんの横腹をかすめてミサイルのようにぶっ飛んで行き、壁にぶっささりました。相原コージさんの「かってにシロクマ」みたいな青ざめた顔が目に浮かびます・・・。おっそろしー・・・!

しかも、真冬に休日出勤1名ですから、ほんの少しずれてたら、メルマガ福岡さん号は世の中に出ることはなかったでしょう。

いやいや、そんなことより、JD-800が世に出ないってことですから。本当にご無事でよかったです!

これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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