反則の販促

配信日 2018・06・1

おはようございます。坪井佳織です。

みなさん、テレビ朝日の『激レアさんを連れてきた。』っていうバラエティー番組をご存知ですか? わたしは、弘中アナのとぼけた進行が面白くて毎週見てます。

というわけで、ご紹介します、ローランドの激レアさん。

ある日突然「キミ、今日から電子チェンバロ開発な」と命じられて一生懸命開発したけど、電子楽器お得意の機能がお客さんからまったく相手にされず、このままじゃ売れないからと勝手な販売促進活動をしちゃって、あちこちの部署から怒られたのに、最終的に社長になった人、三木純一氏で~~す!

あ、そもそも、チェンバロってご存知ですか?
ピアノの前身と言われている鍵盤楽器です。英語だとハープシコードっていいます。

木村カエラさんの「バタフライ」、キャンディキャンディのオープニングテーマ、ディズニーランドのエレクトリカル・パレードのテーマなどに使われているキラキラした音がチェンバロですね。

開発にあたり、三木社長(当時はクラシック開発部長)は徹底的な楽器調査を行いました。

それで、チェンバロにはたくさんの種類の調律方法があることや、タイプによって音色が違うことなどが分かり、そんなの電子楽器ならお手の物ですから、便利機能を盛り込んで開発し、「どや。」と奏者の元へ持って行ったところ、なんと、だぁ~れもそんな機能に興味を持たなかったそうです。

お客さまが気にしたのは、とにかく、鍵盤のタッチ、タッチ、タッチ!!

この経験が、三木社長にとって、エンジニアの思い込みとお客さまの視点とのギャップを痛烈に感じた最初のきっかけになりました。

こちらが、そのとき開発されたC-30です。
(編集部注:現在は販売完了となっております)


「ついに発表!ローランドから電子チェンバロ新発売!!!」

どうですか?
心踊ります??
まぁ興味ないですよね。

いくつもある新製品の中で、メーカーとしての優先順位も普通に考えて低く、「よしっ!会社をあげて広告宣伝に力入れましょうっ!!」ってこともなく…。

売れるための宣伝やグッズ作り、キャンペーンなどをまとめて「販売促進活動」、略して「販促(はんそく)」と言いますけど、当時、三木社長がやったのは完全に「反則」でした。

「失敗を恐れず何でも挑戦してみよう!」という方なので、勝手なことをいっぱいやって、あちこちの部署から怒られたみたいです(笑)。


今から10年ほど前、既に退社して子育てしていたわたしは、「たぶん売れない電子チェンバロ作ったけど、どうやったら売れるか考えへんか?」という、最高に面白そうなミッションにお誘いいただきました。

このメルマガのために当時わたしが作った資料を引っ張り出してみたら、面白いものばかり出てきたのでご紹介します。



反則の販促・その1

当時クラシックの演奏家のほとんどの方が「電子」というだけで「触ってはいけないもの」というような反応をされていたそうです。そんな中でC-30に興味を持っていただいた、世界的に有名なチェンバロ奏者の中野振一郎氏にローランド本社工場へお越しいただき、演奏やインタビューを録画しました。


後ろのカーテンをご覧ください。
これ、物干し台と布で三木社長が手作りしたものです!

他にも、世界で活躍する中野さんに対し、ふっつーのファンデーションをペタペタしただけで出演いただいてしまったり、そもそも、撮ってる機材がふっつーのホームビデオカメラだったりと、笑いポイント満載の撮影でした。

だけど、中野さんは本当に辛抱強く気さくにご協力くださり、わたしは「一流の音楽家は、ただ音楽として奏でてくださるんだなぁ」と感動したものです。



反則の販促・その2

左ができあがったDVDです。
わたしがデザインしまして、家庭用プリンターで盤面印刷しました(笑)。
もう色あせてます、ただの白いDVD-Rにインクジェットですから。


三木社長があちこちに勝手に配ってたら、社内から「ちゃんとローランドらしいの作って!」と怒られまして、右が作り直されたものです。
研究所のスタジオできちんと録画され、画質が全然違います。

そうはいっても、中野さんの演奏が素晴らしいのはもちろん、インタビューも人柄が出てすごく面白いムービーだったんですよ!お蔵入りがとてももったいないです。



反則の販促・その3

DIY大好きな三木社長の反則技は続きます。

かつて楽器店で販売接客していたわたしが「販売員が楽器のこと理解したり愛着持ったりしないと売れないです。お客さまに説明するための接客マニュアル作りましょう!」と作ったものがこちらのクリアファイルです。


いいですか、クリアファイルです!
100均で買いました。
ここまで来たらもうお分かりですね、はいそうです、家庭用インクジェットプリンターで印刷です。

今回、久しぶりに見たら、英訳バージョンもありました(笑)。
誰か欧米人が使ったんでしょうか、わたしが書いたセールスマニュアル。

…で、はいはい、今回も同じパターンです。

三木社長が勝手にあちこち配って怒られ、然るべき部署で作り直されたカタログが上に置いてあるものです。正方形で素敵でしょ?

これらの反則物を持って、販売員の研修などで講師も務めましたね~、懐かしい。 誰か売ってくれたのかなぁ。



あ、そうだ、一台は売れましたよ。
こちらです。




わたしんちです。


これからも全力でゆるい楽屋ばなしをお届けしてまいります!

ライター・プロフィール

楽屋の人:坪井佳織 (つぼい かおり)

電子ピアノや自動伴奏の開発に携わっていた元ローランド社員。現在、本社近くでリトミックを教えています。元社員ならではの、外でも中でもない、ゆるい視点でメルマガを執筆しています。どうぞよろしくお願いします。

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