THE '303 STORY

ローランド TB-303。その象徴的な銀色の筐体は、温かくもエネルギッシュで個性的な音を創り出し、1980年代後半にはアシッド・ハウスのムーブメントを引き起こしました。発売から数年間は日の目を見ることのなかったTB-303は、とあるエレクトロニック・ミュージック・プロデューサーとの出会いにより、これまでの催眠術が一気に解かれたかのように、小さな銀色の箱から創られる音が人々を魅了していきました。それから現在に至るまで、TB-303は人々の心を掴み続けているのです。


TB-303の軌跡

アシッド・ハウスの先駆者 DJ Pierreと不朽のTB-303

Part 1 - 303 Origin
PART 1
THE
ORIGIN

OSAKA, JAPAN
1981

1981年、エレクトロニック・ミュージックシーンは現在と大きく異なり、電子楽器の技術も今ほど発達していませんでした。アナログ回路が広く使われ、アナログ特有の温かみがありながら、時に予測できないサウンドを生み出していました。デジタル技術は使い始められたばかりで、新しいアイデアと数々の実験が技術を進歩させていきます。ローランドの拠点は大阪にあり、創業10年も経っていない頃でした。

TADAO
KIKUMOTO

当時、リズム・マシンTR-606の開発に取り組んでいたエンジニア菊本忠男氏。彼は、一人での練習時やライブ時にも持ち出せる、エレキ・ベースの音を鳴らせる機材の開発を計画していました。TR-606とTB-303はDIN Sync技術によってテンポ同期が可能で、この2台があれば、打ち込み可能でポータブルな”バッキング・バンド"を実現できたのです。

Tadao Kikumoto - Bio
TB-303 & TR-606 TB-303 Close Up

THE
SOUND

アナログ回路で構成されたTB-303が開発された当時は、まだ単音しか出せないモノフォニックが主流で、ポリフォニックになるのは、まだまだ先の話でした。(TB-303のTBは、Transistor Bassの略)TB-303開発チームは、彼らの持てるすべての知識と技術を駆使して、ベース・サウンドの再現を目指しました。

TB-303 - The Sound
TB-303 - The Keyboard

THE
KEYBOARD

TB-303は1オクターブのミニ鍵盤を搭載しています。実際は、オンとオフの切り替えができるボタン・スイッチで、それぞれに赤いLEDランプが配置されていました。ボタンはピアノの鍵盤と同じような見た目と配列で、入力すると単音で発声する仕組みでした。

THE
SEQUENCER

TB-303のステップ・シーケンサーは、パートごとに入力ができるリズム・マシンと同じように、本体の鍵盤ボタンで一音ずつ入力して、一つのパターンを作成していきます。そして、実際にはリズム・マシンと同期させながら、作成したいくつものパターンを繋げていくことで曲として演奏していました。

TB-303 - The Sequencer
TB-303 - The Controls

THE
CONTROLS

世の中にはさまざまな種類のベース・サウンドが存在し、その多彩な音色を作りやすくするため、コントロールつまみを多く搭載しました。TB-303の上部に配置された6つのつまみには、カットオフとレゾナンスが組み込まれ、自分好みの音に調整することを可能にしました。発売当時は、つまみがたくさんあって操作が複雑と言われましたが、5年後、まったく別の世界で、その”つまみ”が大きな役割を果たすことになります。

ベース・サウンドの再現を目指したTB-303でしたが、実際のサウンドはかなりかけ離れているものでした。そして時代は、サンプリング技術の進歩とともにPCM音源へと移行。1981年に発売されたTB-303は1万台が製造されましたが、ちょうどそのような過渡期だったこともあり、2年も経たないうちに販売終了となってしまいました。普通であれば、ここで製品の歴史は幕を閉じることとなるのですが、TB-303はここからミラクルを起こします。

Part 2 - The Rebirth
PART 2
THE
REBIRTH

CHICAGO, USA
1985

シカゴのクラブ・シーンでDJ Pierreとして知られているNathaniel Jonesは問題を抱えていました。当時パートナーであったSpanky、そしてHerb Jと一緒にPhutureというトリオを組んでいた彼らは、音楽制作に入る前に新しい手法を検討していました。レコードをリリースするにあたり、地元の楽器店でおもしろい機材がないかをあさってみたり、限られたスタジオ機材から最高のものを引き出す方法を考えていました。そしてある日、彼らは楽器店で投げ売りされていたTB-303を発掘し、その可能性に気づいた彼らは活用する方法を模索し始めたのです。

PHUTURE
EXPLORE
THE 303

303の操作で試行錯誤する間(取扱説明書がない状態で購入したため)、彼らはリズム・マシンのパターンに合わせて303を鳴らして遊んでいました。あるときできた一つのパターンに引き寄せられ、Pierreはコントロールつまみをいじり、音を根本的に変化させました。非常に奇妙でありながら新鮮でもあったその音を使い、彼らはジャム・セッションし、テープに残したのです。

Phuture discover the 303
Ron Hardy

RON HARDY
@ MUSICBOX

Phutureはそのカセットテープをシカゴの伝説的なクラブ Music Boxに送り、それはレジデントDJであったRon Hardyの手に渡りました。彼はその夜4回プレイしましたが、最初の数回は、観客がその奇妙な音で踊る方法がわからず困惑していました。 しかし4回目のプレイで何かが観客に浸透し始め、みんなが「Ron HardyのAcid Track」と呼んだこの曲について話題になり始めました。
Image © Reggie Corner

ACID TRACKS
RELEASED

「Acid Tracks」として知られるレコードが実際にリリースされるまでに2年かかりました ― 1987年に最初に人々の耳に入ったとき、そのトラックはすでに誕生して2年の月日が経っていました。シカゴのTrax Recordsから「Acid Tracks」が発売されるまでのこの2年の間に、瞬く間に数多くの類似した作品が生み出され(いずれもTB-303が使用されていました)、アシッド・ハウスというジャンルが誕生しました。シカゴの数千マイル東にある場所で、物事はまだ始まったばかりだったのです。

TB-303 - Acid Tracks
Part 3 - The Culture
PART 3
THE
CULTURE

UK/EUROPE
1987

1987年、多くの注目を集めたアシッド・ハウスは、シカゴから大西洋を渡りまたたく間に広がりました。ハウス・ミュージックは、一般的にボーカルとトラディショナルなベースライン、そしてピアノなどを含みますが、アシッド・ハウスは突然変異的に生まれ、今までにない破壊的で得体のしれないサウンドが、人々を踊り狂わせました。そして、1988年に起きたムーブメント「セカンド・サマー・オブ・ラブ」では熱狂的な盛り上がりを見せることとなります。

TB-303 MONTAGE

Exploded 303:
Sergei Smirnov

‘ACID HOUSE LOVE’ PRINT AVAILABLE TO BUY FROM DOROTHY

SHOOM:SECOND PHASE

SHOOM:
SECOND
PHASE

アシッド・ハウスの爆発的な広がりの震源は、1987年サウス・ロンドンで開かれた300人規模のクラブ・パーティー "Shoom" だと言われています。DJ Danny Ramplingは、自身のスペインの バレアレス諸島にあるイビサ島での体験をベースに、さまざまな音楽をミックスするスタイルの新しいクラブ「SHOOM」をはじめました。これまでにない新しいスタイルのDJのプレイリストから、人々を踊り狂わせる、熱狂的で303色の強いアシッド・ハウスのバイブスが流行し、さらなる広がりを見せていきます。
Image © Dave Swindells

ACID
HOUSE
CULTURE

この流れは、カルチャーの革命をももたらします。それまでメイン・ストリームだったクラブ・シーンを抜け出し、若者たちは非合法のオールナイト・パーティに集まり、急速に彼らのライフ・スタイルをも変えて行きました。そして、TB-303によって作られたスケルチ・サウンドやシーケンスは、徐々にムーブメントの象徴的なものとなっていきます。

ACID HOUSE CULTURE
MEDIA COVERAGE

MEDIA
COVERAGE

熱狂的な広がりを見せる一方で、無秩序なレイブが問題視されはじめ、メディアや政府は取り締まりを厳しくしていきます。多くのレイブが摘発され、公式に認められた会場や大規模な(合法の)フェスティバルへと変化を遂げていきます。そのような変化の中でも、アシッド・ハウスの精神は残り続け、各所で開催されるパーティーで「銀色の筐体」が使われ続けていきます。

Part 4 - The Legacy
PART 4
THE
LEGACY

WORLDWIDE

音楽史上激動だった80年代後半は、もはや遠い過去かもしれません。しかし、その礎を築いたTB-303のスケルチ・サウンドは、今もクラブ・ミュージックの中で力強く活きています。そして、常にサウンドが進化しているクラブ・ミュージック・シーンの中でTB-303のサウンドがこれほどまでに永く愛されているのには、世界中のプロデューサーやアーティストたちによって、いつも最新のTB-303サウンドが作られてきたことも忘れてはいけない事実です。

THE 303 SOUND TODAY

高額な80年代初期のオリジナルのTB-303を探して購入する以外にも、TB-303のサウンドをより手頃に手に入れる方法があります。しかも、オリジナル機を凌駕するサウンドとパフォーマンス機能も兼ね備えています。

Try the TB-303 in your browser

TB-303をブラウザで体感しよう

世界的サウンドデザイナーであるユーリ・スズキ氏とのコラボレーションにより、ローランドの象徴的な楽器をデジタルでリメイクした「Roland 50 Studio」を制作しました。TB-303、サンプラーSP-404MKII、シンセサイザーSH-101、TRリズム・マシンの数々をお楽しみください。作成したトラックを保存して世界中にシェアすることもできます。

ROLAND 50 STUDIO
リンク先は英語のコンテンツになります

TB-303 C

TB-303
SOFTWARE
BASS LINE

Roland Cloudでは、ソフトウェア・シンセ版TB-303をリリース。DAW上でTB-303をプラグインとして使うことはもちろん、Roland Cloudプラットホームにより、常に最新の状態へと進化を続けていきます。

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Limited Edition Serato + Roland Vinyl

303 Dayを記念して、Seratoとタッグを組み、スペシャルエディションのレコードをリリースしました。J. Rocc、Fast Eddie、Shadow Child、DJ Hausといった先駆的なDJとのコラボレーションにより制作された12インチ・Serato + Roland TB-303 Bass Line/TR-606 Drumatix Control Vinylは、303 / 606への敬意の象徴であると共に、最高のツールキットでもあります。

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Limited Edition Serato + Roland Vinyl
TB-303 Sounds from A Guy Called Gerald

A GUY CALLED GERALDのTB-303サウンド

808 Stateの創設メンバーであるA Guy Called Geraldは、活動初期から画期的なシングル「Voodoo Ray」に至るまで、エレクトロニック・ダンス・ミュージックの常識を壊すために「True School」の精神を貫き続けました。レジェンドによる神秘的かつ独創的なTB-303のコレクションをお楽しみください。これらの別パターンを使用して、楽曲に独特のリズムを追加したり、303の可能性を極限まで広げるパッチで新たな音楽世界を作り上げましょう。

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J.ROCCによる303ミックス

Beat Junkiesの創始者であり、Stones Throw Recordsの重鎮であるJ. Roccによる303フレーバーのミックスをチェックしましょう。Daft PunkやFatboy Slim、そしてジャンルを超えた創造力とサプライズに満ちたミックスをお楽しみください!

Phuture Collection

DJ PIERRE PHUTURE COLLECTION

アシッド・ハウスのパイオニアであるDJ PIERRE。彼が手掛けた、このRoland Cloudのパッチとパターンのコレクションは、あなたのトラックを変身させます。TB-303の伝統的なスケルチ・サウンドと、TR-707、TR- 727のダイナミックなリズムの組み合わせにより、彼自身の制作とサウンド・デザインのスキルはこれまで以上に洗練され、オリジナリティ溢れるハイテンションな名曲を作り出すために最適なコレクションを完成させました。

PHUTURE COLLECTION

DJ PIERRE
INTERVIEW

この独占インタビューでは、伝説的名トラック「Acid Tracks」の制作秘話、アシッド・ハウスという音楽ジャンルの誕生、そして初期のシカゴ・ハウス・シーンについて語っています。

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TB-3
Original 303

ORIGINAL
TB-303

TB-303は、これまで1万台が製造されましたが、工場出荷時の状態に近いものは本当に希少です。そして仮にオリジナルのTB-303を見つけたとしても、オリジナルより攻撃的なサウンドを得るためにディストーションやディレイを追加するといった改造がされていることもよくあります。今やオリジナルのTB-303を持つことは、マニアにとってはステイタスになっています。