TRシリーズの歴史
TR-707の前身であるTR-909は、フルデジタル機としてではなく、アナログ - デジタルのハイブリッド機として開発されました。当時、メモリやD/Aコンバータが高価であったことから、フルデジタル設計では価格が高くなりすぎるという懸念があったためです。また、PCM音源を用いればよりリアルなドラム・サウンドを作り出せる一方で、音色のエディットはほとんどできなくなるという問題もありました。
ところがTR-909の発売後、デジタルPCMがシンセサイザーやドラムマシンの主流となっていきます。ローランドではTR-707とTR-727でこの流れに乗りますが、メモリが高価であったこと、そして高精度のD/Aコンバータが存在しなかったことから、サンプル再生エンジンは25kHz、8-ビット(音色によっては6-ビット)という、現在の基準からいえば単純なスペックを採用します。TR-707とTR-727は主にリズムのプログラミングを目的に開発された製品で、ユーザーによる音色のエディットはできませんでしたが、最終的にはその特徴的な「高音質ではない」パンチによって多くのミュージシャンに受け入れられ、今日でも多くのファンに求められています。
TR-606 Drumatix
TR-606は、今も人気のあるTB-303と同様のアイコニックなデザインでTB-303が”ベーシスト”、TR-606は“ドラマー”といった兄弟シリーズとしてリリースされました。TR-808やTR-909などが段々と知られていく間にもTR-606は、著名なミュージシャンのヒットトラックに使われている機材と言う事でドラムマシーンマニアの中では、特別な存在として知られていました。
30年以上が経った後に様々なジャンルに使用されてきたTR-606は、TR-8専用のDrum Machine Expansion Utility「7X7-TR8」 をご購入頂くことによってお使い頂けます。TR-8をアップデートすることでTR-606の敬愛されているスネアやハイハット、ラウンドしたキックやタムのサウンドをTR-808、909、707、727とミックスして使用することが可能になります。更にTR-8に搭載されている「Snappy」や「Tune」、「Decay」のノブ操作によるエディットが可能になっており、TRシリーズのオリジナルのキャラクターを踏襲しつつも今までにない新しい独自のTRサウンドを作る事も出来ます。
オリジナルを捉える
TR-707とTR-727は主としてデジタル機器ではありますが、サンプリングによりその音色を完全に再現することは不可能です。オリジナル機ではビットレートの低さから、音の減衰時の量子化ノイズが問題となりました。量子化ノイズを減らすために採用された設計は、PCMサウンドを減衰しない波形で作り、変換後にアナログ回路で減衰させるというものでした。また、これらの機器が開発された当時は、PCMを発音させるクロックにバラツキがあったことからピッチの違いや、D/Aコンバータ以降のアナログ回路のバラツキにより減衰特性にも違いがありました。
TR-8でこれらの音色を再現するにあたり、オリジナルに使われたPCM波形データを出発点としました。次にACB処理によりPCM出力ステージを、クセや不安定さを含めて全て完全にモデリングしました。また、D/Aコンバータ以降のアナログENVとアンプをモデリングすることで、オリジナルにはない「Tune」と「Decay」パラメータをTR-8に実現することができました。
8の中に7を・・・そして+α
7X7ドラムマシン拡張音色を導入することで、TR-8の演奏体験を新たな次元にまで高めることができます。それぞれに「Tune」と「Decay」が付いたTR-707とTR-727のオリジナル音色全30音色が使えるこことで、まったく新しいサウンドの可能性の世界が広がります。7X7拡張音色には、TR-707とTR-727のオリジナル音色の他に、TRの開発に携わったエンジニアたちに触発された、これまでになかったまったく新しい音色7音色が加わります。新たなTR-808のノイズサウンドとフィンガー・スナップはこれまで以上の多彩なサウンドを生み出し、TR-909のバスドラムとスネアのアタック特性が強化されたことにより、このクラシックなコンボにとって新たな領域が開かれます。
7X7で拡張したTR-8では、TR-707、727、808、909の音色はもちろんのこと、様々な音色を利用することができ、それぞれがキットごとにカラーコードされているので選択も簡単です。さらに、TR-909の8段階のフラム、TR-707の多様なアクセント挙動により、グルーヴ感を作り出すための選択肢が大幅に広がります。どのステップでもヒットの強弱調節、アクセントの強弱調節、フラムの調節を行うことができ、ステップ毎のエフェクトとサイドチェーンを持たせることができます。TRシリーズ・ドラムマシン名機4機のすべての音色と挙動、そして、そして、TR-8独自のダイナミックなスウィング、ロール、フェーダー、さらには全音色に使えるTuneとDecayにより、TR-8はローランド歴代最高のドラムマシンとなります。